にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した弁護士の物語である

平成29年司法試験短答式試験の合格点は……

まいどでーす。

短答の合格点が出ました。


ななななな、なんと
短答式試験の合格点は108点!!!!
http://www.moj.go.jp/content/001225941.pdf

去年よりだいぶ下がりましたねえ。

にーやんは択一苦手なんですが、短答通過者平均を超えていたのでとりあえず第一関門はクリアです。
短答通過者平均は一つの目安だったので、良かったです。

思い返してみると、予備試験の短答を含めると10回近く連続で短答は通過してるので、ほんと論文対策ちゃんとしろよって話です。いや~、お恥ずかしい!!!!
とはいえ、本当に択一苦手なので、昔はかなり勉強しました。
でも、三振した直後からまったく択一対策しなくなり、三振直後に受けた予備試験はまだ余裕とか思ってましたが、年々下がる一方。特に、二回目のロースクール生活中は、択一対策は怠慢だったなと……
当たり前なのです。択一なんて入れなきゃ、スーっと知識が抜けるんですから。綺麗に下降していきます。

直前期くらいはちゃんと択一用の知識を詰め込む必要があるなぁと、当たり前ながら思いました(毎年思ってる)。
択一対策せずになんとか合格点取れていたのは、それでも既存の知識がほんの少し残っていて、それを最大限に活用して、なんとか人並みの点数になったという感じがします。

苦手意識が強いせいか、毎年この時期は結構ドキドキです。

それより論文ですな。
正直、自信はない。
ので、今のうちに演習をしておこうっと。

はぁ……


たまたま下記のブログ見つけました。
ameblo.jp

国内トップクラスの、東大ローや一橋ローでも2割の受験生が短答落ち。

短答すら合格しない学生を卒業させちゃダメでしょ・・・。

コメント欄がこの発言で炎上してました。あらあら。

三振するような小生も卒業させんなってことですね、わかります。
とはいえ、短答も論文もロー修了生(と予備試験合格者)だけが受けて、たとえロー修了生が全員優秀であっても、そのうちの一定数(短答は受験者の3分の1)必ずを落とす試験。
つまり、全員合格は(全員優秀であったとしても)あり得ない試験ということです。例えば、今年の問題で仮に受験者3分の2が170点以上取って、残り3分の1が全員165点ならこの人達は短答に落ちるという試験なので(ちなみに今年の最高点は163点)、「短答合格する人だけローを卒業できるという仕組み」なんていうのは一定数必ず落とす試験制度において成り立たないということですね(この点で行政書士試験なんかと異なりますね)。
ほんま世知辛い試験ですわ……

H29民訴論文設問3 再考――法的性質に既判力が生じるという意味(補足)

H29民訴論文設問3では、売買契約の成否及びその額には前訴の既判力が及ばないという点については、以下の記事でみました。

nihyan.hateblo.jp
nihyan.hateblo.jp

小生の説明不足からか、正確に伝わっていないようです。申し訳ございません。
ご質問を受けました。

受験生
 すいません 質問なんですが にーやんさんは「売買契約に基づく」という部分を訴訟物を特定するための手段に過ぎないという趣旨の書き方をされていましたが 民訴法114条1項の主文に包含する範囲は訴訟物を指すのが通説ですよね そして旧訴訟物理論は実体法上の請求権を識別基準にするのだから「売買契約に基づく」という部分は旧訴訟物理論に立つ限りは訴訟物そのものですよね 普通に考えたら売買契約の締結は判決理由中の判断で既判力は生じませんが「売買契約に基づく」という部分も既判力をもって確定されそうなものですが この当たりがよくわからないのです

>旧訴訟物理論は実体法上の請求権を識別基準にするのだから「売買契約に基づく」という部分は旧訴訟物理論に立つ限りは訴訟物そのもの
おっしゃる通りです。が、訴訟物の意味の捉え方が問題です。この部分をもって、「売買契約の成立という訴訟物に対する判断がなされる」とすれば、それは間違いです。

>普通に考えたら売買契約の締結は判決理由中の判断で既判力は生じませんが「売買契約に基づく」という部分も既判力をもって確定されそうなものですがこの当たりがよくわからない

「売買契約に基づく」という部分も既判力をもって確定されるの確かですが、その意味が問題です。
結論からいえば、既判力をもって確定されるのは、判決理由中の売買契約の成否ではなく、当該請求権が売買契約の権利であるという法的性質に関する部分です。

目次

  • 「売買契約に基づく」という部分も既判力をもって確定されるという意味
  • 法的性質に既判力が生じるという意味
  • 先決関係
    • 先決関係で後訴に前訴の既判力が作用する場合
    • 先決関係を理由に前訴の既判力が作用しない場合
  • 補足
    • 前訴・後訴同一の契約による請求
    • 請求権競合・複数の契約
  • 補足の補足
続きを読む

H29民訴論文設問3 補論

補論

コメントで、民訴設問3に関して、「売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権」の存在に既判力が生じるとすると、「売買契約に基づく」という部分も既判力が生じるから、後訴はやはり売買契約の不成立の主張に遮断効が生じるんではないか?という質問を受けた。

この点に関してもこの記事で検討したつもりです。
nihyan.hateblo.jp

それよりも、旧試の平成15年度第2問が今年の民訴の解答を提供しているにもかかわらず、この点に触れるのを忘れてました。
以下で、コンメンタールや藤田先生が指摘するように、引換給付の売買契約に基づく代金債権については既判力は生じません。

ということで、基本の確認

続きを読む

民訴法論文における既判力が「及ぶ」と「生じる」の書き分け

おいすー

にーやんです。

既判力

既判力って難しいよね。
ということで、今回も既判力のお話。


ところで、皆さんは、勅使川原和彦先生のことをご存じだろうか?
通称テッシー

テッシーの『読解 民事訴訟法』という本がなかなかおもしろい。
何がおもしろいって、次のようなわけわからない民訴の世界に浸れるところだ。

テッシー『読解 民事訴訟法』152頁

 「仮面ライダーに変身することと,変身後の仮面ライダー(注1)がライダーキックを誰彼構わずお見舞いしまくることを,同じだと考えていないか?」
となんともビミョーな喩えで説明して学生に呆れられているが,既判力が「生じる」(仮面ライダーに変身する)ことと既判力が「及ぶ」(ライダーキックをお見舞いする)ことは違うのである。仮面ライダーがライダーキックをお見舞いするのは,ショッカーに対してだけであり,既判力においては,前訴と後訴の訴訟物が「同一関係」「先決関係」「矛盾関係」のいずれかにある場合にだけ作用する(=効力が「及ぶ」)とされているのである。
 しかし学生の答案では,とにかく無辜(むこ)の一般市民にライダーキックをお見舞いしまくるものが意外に多いのである。



注1)仮面ライダーを知らない方のために簡単に補足すると,仮面ライダーは人類を守る正義のヒーローで主人公が変身して超人的な能力を得た姿であり,ライダーキックはその必殺技。ショッカーは地球征服をたくらむ悪の組織とその戦闘員である(原作漫画:石ノ森章太郎,@石森プロ・毎日放送東映)。

意味不明である。
そして、お見舞いしまくりである。

続きを読む

H29民訴論文の設問3について

ままま、まいどです。


友人に質問されたので、民訴の設問3についても触れておこうかと。

既判力に関する部分の検討は基本事項の確認みたいなものかと思います。
実はこれ旧試の平成15年度第2問で似たような問題が出されているところでもあったので、これやってたら簡単だったかも。

問題文では、次のように書かれている。

 上記の訴訟(以下「前訴」という。)においては,「Yは,Xから200万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」との判決がされ,この判決は確定した。

これは、設問2の問題文を前提とすると、主位的請求である贈与契約の請求は認められず、売買契約に基づく請求が認められて、引換給付判決がなされたということだろう(贈与契約の請求と売買契約の請求を交換的に変更した余地もあるかもしれないが、わざわざそんなことしないだろう)。

少なくとも、前訴でなされた訴訟物に対する裁判所の判断は、売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権が存在するというものだ。
したがって、この判断に既判力が生じる。

続きを読む

処分権主義における「申立事項」とH29民訴論文設問2⑵

前回の続き

設問2の答案構成

設問2
小問⑴
1 Stg:XのYに対する贈与契約に基づく本件絵画の引渡請求権 1個
⑴ 第1回口頭弁論期日におけるXの「仮にこの取引が売買であり」という部分は、訴訟物で主張する贈与契約と両立しない。
→ 予備的請求として訴えの追加的変更をするか釈明求めるべき
仮に、予備的請求として追加すれば、引換給付判決の余地あり
⑵ 予備的請求が追加されたことを前提にすると、Yの契約が売買だったとする旨の主張は、主位的請求との関係では積極否認、予備的請求との関係では、売買契約の事実については先行自白となる。
 同時履行は権利主張も必要
→ この点について釈明を求めるべき
2 以上を前提に、同時履行の抗弁権をYが主張する場合、引換給付判決OK
∵ 処分権主義の趣旨 Xの意思 Yへの不意打ち
小問⑵
1 220万円
⑴ 裁判所は220万円と評価することは弁論主義違反にならない
∵ 売買代金の時価相当額は法的評価
⑵ 引換給付判決は処分権主義違反にならない(質的一部認容判決)
よって、200万円の引換給付判決OK
∵ 全部棄却よりXの意思に沿う Yへの不意打ちもない
2 180万円
⑴ 上記⑴同様
⑵ 引換給付判決は処分権主義違反になる
∵ Xが自認する200万円以上の債務がないという申立事項に準じてみることができる(債務の一部不存在確認の訴えと実質的に同視)。Yへの不意打ちにもなる。
200万円の引換給付判決にとどめるべき。

小問⑵がにーやんの現場思考で思いつきという点は前回指摘した。

本問の予備的請求に関しては、売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権が訴訟物であり、代金支払請求権は訴訟物ではない。
したがって、代金額部分は審判対象じゃないはず。
そして、代金額の時価相当額の判断を法的評価とすれば、代金額の判断は裁判所の専権事項といえそう。
なので、当事者が主張しない額でも、裁判所は認定できそうだ。
しかし、それって特にYにとっては不意打ちになりそうだ。だから、少なくともこれを理由に引換給付判決ダメと書けば足りるのかもしれない。

以上は、「訴訟物=申立事項」という前提での思考。
にーやん的にはこの前提だった。しかし、これは従来の理解といえる。

にーやん的には、本問は処分権主義のメインの問題は、これが「申立事項」を超える判断かどうかだと思った。「申立事項」の範囲を定めて何を設定するのかは原告にのみ委ねられたものであり、これを逸脱してはならないというのが処分権主義だからだ。
で、自分なりに理屈を考えてみた。

続きを読む

H29の民訴論文は去年に引き続き問題文がよくない!と思いました。

まいどまいど~。

にーやんです。

早くも試験終了から一週間近く経ちそうです。

今日は民訴の話。


「おい!民訴の設問1!課題が何かわかりにくいやんけ!」

そう思ったのは小生だけではないはず。

J1は
「あなたの言うような判決(引換給付判決)を直ちにすることができるのでしょうか。」
ということをPに聞いており、これも課題のひとつと考えてしまっちゃうのもやむを得ないことでございます。
まぁ、配点が15点分で、「まず,Yの代理人AとXとの間で契約が締結されたとの心証が得られたとして,その事実を本件訴訟の判決の基礎とすることができるのかについて,考えてみてください。」と書かれていることからすると、この点を検討することが課題であることは明確といえようが……
とはいえ、「まず」これを考えて、それから引換給付判決できるか考えろという課題ともとれる。

まぁ、そうすると、「まず」弁論主義違反の話を書かなければならないわけじゃないっすか。
本問の場合、引換給付判決が訴訟物を逸脱した判断であるから処分権主義違反明白。
そして、代理による契約締結は契約に基づく請求の場合、主要事実に当たると考えるのが通説・実務なので、弁論主義違反。
つまり
処分権主義 ×
弁論主義  ×

ということで、いずれにしても引換給付判決できないという点に変わりはない。
課題の趣旨からすると、「まず」弁論主義違反について検討すべきところ、まず処分権主義違反について検討して、さらに弁論主義違反を検討しました(汗)
この手の問題は処分権主義から検討してたという「慣れ」かもしれません。
あと、処分権主義については不要か。

だ、だって論点落とすの怖かったんや(涙)

無駄に紙幅を費やしたが、比較的今年の民訴は優しい方だったので、書く時間は結構あった。

問題は、設問2。何を書くかはなんとなくわかるものの、どう書けばいいのかよくわかんないという感じの問題。
この問題を通じて、「申立事項」て訴訟物やけど、あれ?引換給付判決における引換給付部分の判断は「申立事項」なんか?とか、あんまり考えたことのないことを考えさせられた問題だった。

続きを読む