にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した弁護士の物語である

「悪口と差別発言は違う」というひろゆき氏は論理破綻?

まいどー
ただの弁護士です。

久しぶりのブログ
忙しいのです(´;ω;`)ブワッ

ひろゆき氏がフルボッコにあっているという記事を見かけた。


yaraon-blog.com

前々から、ツッコミどころが多いのに、なぜ誰もテレビではツッコまないのか?
と、思ってたところ、鋭いツッコミが入ったようです。

ここでは「Putainの多義性を知らない人が」という文章を冒頭に持ってきている。これは明らかな結論の先取り。尋問なら誤った前提での発言ゆえ誤導だと異議を出されるのではないか?
「Putainの多義性を知らない」のかどうかは明らかではない。ひろゆき氏の頭の中だけでそういう(誤った)前提で発言しているのである。
法律の世界では、事実認定は、論理則・経験則に基づいて事実が導き出されるわけであるが、「Putainの多義性を知らない」ということは客観的に明らかになっていないし、そもそも問題点はそこではないのに論点のすり替えをしている旨指摘されている。

また
「「フランス語の専門家」を名乗ってるので、不勉強だと指摘しました。」
というところが、ひろゆき氏のおもしろいところ。いやいや、不勉強はどっちなんですかと。

ずっと違和感があったのは、ひろゆき氏が、当初から下記のような発言をしていたときから。
news.yahoo.co.jp

自身のYouTubeで、「悪口と差別発言は違う」と主張した上で、デンベレの発言は悪口で、日本人に対する差別の意図はないという見解を示した。その理由として、あの動画内で日本人従業員がウイニングイレブンの言語設定を日本語からフランス語に変えているという状況に、多くの人達が気づいていないと指摘。日本語を馬鹿にしたのではなく、言語設定の問題について会話しているという見解を示した。「フランス語の知識と日本語の知識の両方が分かっていないと(動画)全体の構造が理解できない」「『あれを差別と認めないんですか?』、『フランス語が分からないんですか?』と書いているんですけど、あれは悪口なんですよ。差別だと言い張りたい日本人が多いんですよね。なんであれを差別にしたいのかわからない」

「悪口と差別発言は違う」と主張しており、「悪口」と「差別発言」が峻別できるかのような物言い。
しかし、「差別発言」の多くは人に対する「悪口」であることは、すぐにわかりそうなことではないか?
例えば、ひろゆき氏がよく利用すると言われているウィキペディアにも下記のように記載されている。
差別用語 - Wikipedia

差別用語」とされる言葉には、以下のようなものがあげられるが、もともと差別用語ではなかった言葉や、蔑称、差別と無関係な言葉もある。使用者本人が「差別」に当たらないと考えていたとしても相手の捉え方次第では「差別」とみなされることがある。

職業・階級・身分に関するもの(「上級国民」、「穢多」、「非人」、「酋長」、「賤民」、「ポリ公」、「木っ端役人」、「乞食」、「ルンペン」、「よつ」、「雲助」、「坊主」、「ポンコツ屋」、「ニコヨン」、「百姓・どん百姓」、「山猿」、「土方(どかた)・ドカチン」、「旗振り・立ちんぼ」、「隠亡屋」、「お水」、「汚穢屋」、「汲み取り屋」、「バタ屋」、「ゴミ屋」、「株屋」、「犬殺し(野犬捕獲員)[4]」、「人夫[4]」、「高卒」、「中卒」、「ナマポ[注釈 2]」など)

例えば、「この乞食野郎!」という台詞は、「差別発言」でもあり、かつ「悪口」として発言するような場面も容易に想像できる。
だから、ひろゆき氏がそもそも「悪口」と「差別発言」を峻別して、二者択一ということを前提としているような主張をしていることに違和感を覚えるなと思っていたところだった。
ちなみに、日本国憲法において許されない差別として下記のように規定されている。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

憲法は置いておいて、私人間においても差別的発言が不法行為になることがあり、損害賠償義務を負う場合がある。
例えば、「Aの悩みは女性特有の悩みであるから精神科へ行くようにという差別的発言をした」という理由から、不法行為を認めて損害賠償請求を認めた事例がある(大阪地判平成14年4月12日)。
この事例は、「女性」という性別に着目した「差別発言」であると同時に、Aさんがこのような悩みを抱いていたことに対する「悪口」でもある。実際に、判決では「侮辱的発言」とも指摘されており、侮辱罪における侮辱が「無能」「バカ」「ブス」といった「悪口」に該当すると同時に、そのやり方が「差別的発言」という方法を使ってなされた事例だといえる。

ひろゆき氏は「悪口と差別発言は違う」と主張しているということであるが、そうすると、

それは悪口だから差別発言じゃない!!

みたいなことを言っちゃうのか?
おそらくそのようなことは言わないだろう。
しかし、だとすると、「悪口と差別発言は違う」と言ったところで、それはここでは何の問題解決には役に立たない主張だろう。
ニュースで報じられている事実は、「差別発言」でもあり「悪口」でもある場合の問題だろう。
ひろゆき氏は、「それはこういう意味に決まってるでしょ」という都合の良い解釈を持ってくることができるのかな?

悪口で、日本人に対する差別の意図はない

という発言からすると、やはり「悪口」は「差別」ではないとでも考えている様子。
上記の裁判例のとおり、性別に着目した「差別発言」かつ「悪口」というものはあることは明らか。
また、「日本人に対する差別の意図はない」という理由で「差別発言」にならないというわけでもない。
さらに、「悪口」だから「差別発言」にはならない、ということでもない。
「悪口」だから「差別発言」ではないということをひろゆき氏は説明できないだろう。それが可能だとすると、「悪口」の定義には「差別発言」が含まれないということになる。しかし、上記の具体例からも明らかなように、そんなことはあり得ないし、仮にそうだとしてもただの言葉遊びに過ぎず、問題の実質とかけ離れるだけだ。

と、当初からこの問題に対するひろゆき氏の発言には違和感しかなかった。
その違和感の理由がはっきりしてきたということだろう。
よかったよかった。

追記

フランスのマクロン大統領が当選したときにputainと言ってる動画。
フランス人は普通に使う言葉なのに、「おかしい」と日本人が決めつけてるのが滑稽だなぁ。。と。

>普段そんな極めて下品な言葉を使う英語人やフランス語人と付き合っていないF爺には、判断できません
Best of d'Emmanuel Macron ! 2020 - YouTube

ひろゆき氏のフォロワーが「大統領選の時の」ものという紹介がなされた動画。したがって、マクロン大統領が当選したときに発言した動画ではない。
大統領が酷い言葉を発しているということでMAD化された動画であり、動画の意図としては「大統領がこんな言葉連呼していいのかよ笑」って感じの動画であり、「フランス人が普通に使う言葉」としての動画とは到底いえない。
そういった動画の趣旨を誤解したまま、「フランス人は普通に使う言葉」と決めつけて、事実と異なる情報を発信した日本人のひろゆき氏が、「滑稽だなぁ。。と。」とつぶやいていて、「それおまえやん!」っていうツッコミをさせる高等技術に接した。
ツッコミどころが多いので、そういった娯楽の提供をしているんだろう。
だから、削除してなかったことにするなんて姑息なことはしないだろうな。