にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した弁護士の物語である

パクリのややこしさ。の巻

前回の記事でパクリについて書いた。

思想それ自体のアイデアは共有して、パクりまくって良いもの創ったほうがいいといったことを書いたけれども、法務部の人の話を聞く限り、そう簡単にはいかない難しさがあるようだ。
著作権法は具体化された創作性のある表現を保護するので、具体化される前の抽象的なアイデア自体は保護されない。
具体化された表現でもそれがありふれた表現で創作性が認められないものなら、やはり著作権法で保護されない。

ちなみに、一般的に「オマージュ」は著作権法に違反しない許されるものという勘違いがされることもあるが、まったくそんな関係になく、「オマージュ」でも著作権法違反になる違法なものもあれば、許されるものもある。

ということで、少なくとも著作権法の枠内で考えれば、アイデアやありふれた表現は自由に使えるということになる*1

とはいえ、アイデアやありふれた表現をパクっても、元ネタに「似てる」という点は同じだから、一般人からすると「許されざるパクリ」認定をされることがある。
例えば、これ
http://livedoor.blogimg.jp/newstwo-channel/imgs/e/2/e205728e.jpg
左:黒子のバスケ 右:スラムダンク

スラムダンクはよくパクったとかパクられたとか議論されるけれど、これは黒子のバスケスラムダンクをパクったんじゃないか?って疑惑
結論からいえば、仮に、パクったとしても、これは問題のないパクリ。
構図がそもそも異なり、疲れたメンバーがロッカーでぐったりして寝てるとうい点が共通するが、これはそういう設定が共通するだけで、具体的な表現は異なる。つまり、著作権法の保護対象である創作的表現部分は利用されていないということになる。したがって、複製権侵害にも翻案権侵害にもならない(=著作権侵害にならない)。

しかし、一般的には、そういう設定(アイデア)すらパクることは許されないという風潮にあるように思う。そういう閉塞感はよろしくない。
もっとも、設定が同じだと具体化された表現も似てくることがある。

例えば、「ネコ型ロボット

もうこの時点で、「ピーン!!!!」ときちゃうじゃないっすか?
ど、どら○「ピー」

とはいえ、ネコ型ロボットを書いたからといって、常にアレと同じというわけではない。
あの二頭身の青色ネコ型ロボットとは違う、新しいスタイリッシュなネコ型ロボットは必ずしもドラえ○んにはならない。
具体的な表現が一致してるか、一致している部分に創作的表現が使われているか、というチェックポイントを通過しない限り、著作権侵害にはならない。

でも、そういうパロディをしようとすると、イメージ侵害になるおそれもあり、権利者からクレームがくることがある。著作権侵害でないとしても。
そういうもめることを回避するためにも、実務では、クレームをつけないという趣旨も含めてあらかじめ許諾を得ておくということがあるようだ。
別に許諾を得る必要はない場合であっても一応そういう対応をしておこうと。
これは「日本的な配慮」という感じもする。

表現は自由なほどいいんじゃないかと思う。
その分、くだらないものも多くなるけれど、他方でおもしろいものももっと多くなると思うから。

そういう自由な認識を共有できればいいなと願う。

*1:ありふれた表現でもそれが商標登録されてたりすると商標法による保護がありうる