にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した物語である

再現答案(H29刑訴法)を振り返った反省文

まいどまいど

元気ハツラツのにーやんです。

前回、刑訴の問題の再現アップして、証拠1を甲の供述録取書と決め打ちして書いた点について、調査官解説調べました。
結論としては、大丈夫だったかなと。ただ、それは結果論。要反省。

再現答案

 1 証拠1
⑴ Sが証拠1の取調べ請求をした理由は、甲証言の証明力を争うため
であり、これは328条に基づく請求と解される。
  328条により許容される証拠は、現に証明力を争おうとする供述をした者が自己矛盾供述をしたこと自体を要証事実として、その信用性を争う場合に限られると解する。
  そして、刑罰権の存否を基礎づける犯罪事実は厳格な証明の対象である。したがって、自己矛盾供述を弾劾証拠とする場合も、それが犯罪事実の証明力に影響を及ぼすものである以上、厳格な証明を要する。
⑵ Tの起訴内容は、営利目的の覚せい剤所持の罪であるところ、甲の証言のうち、Tが覚せい剤を用意し、それを甲が売って、売上げの半額をTの銀行口座に振り込んでいたというものである。これは、Tの犯罪事実を基礎づける内容である。
  これに対して、証拠1は、Tは覚せい剤の密売に関与していないという甲の供述を内容とする供述録取書であり、公判廷の甲の証言に対する自己矛盾供述であり弾劾証拠に当たる。これは、犯罪事実の証明において消極的に影響するものであるから、厳格な証明を要する。
  したがって、証拠1は甲の供述録取書であり、甲の供述が書面化されている点の伝聞性を解消する必要があり、甲の署名・押印を要する。しかし、甲の署名・押印はない。
⑶ よって、証拠1を弾劾証拠として採用することはできない。

証拠1は、Pが作成した捜査報告書。
これには、Pが甲の発言内容を聞いた内容が記載されている。
証拠1はPの供述書でもあり、甲の供述録取書でもある。

刑訴法328条により許容される証拠について判示した判例最判18年11月7日刑集60巻9号561頁)でも、このような点も問題になっていた。
判例の事案では、Aから聞込みを行ってKが作成した「聞込み状況書」を証人Aの弾劾証拠として使えるか?ということが問題となった。
原審では、以下のように、この聞込み状況書をKの供述書としてAの自己矛盾供述でないとした。

原審の判断

原判決は、第1審裁判所がした上記証拠請求却下に関する訴訟手続の法令違反の主張に対して、刑訴法328条により許容される証拠は、現に証明力を争おうとする供述をした者の当該供述とは矛盾する供述又はこれを記載した書面に限られると解されるところ、本件書証は、上記 K の供述を記載した書面であるから、同条の許容する証拠には当たらないとして、第1審の証拠請求却下を是認する判断をした。

しかし、以下のように、最高裁も結論は同じであるが、聞込み状況書をAの供述録取書とみて、署名押印を欠くことを理由に328条の許容する証拠に当たらないとした。

最高裁の判断

 本件書証は、前記 A の供述を録取した書面であるが、同書面には同人の署名押印がないから上記の供述を録取した書面に当たらず、これと同視し得る事情もないから、刑訴法328条が許容する証拠には当たらないというべきであり、原判決の結論は正当として是認することができる。

おいおい。まさにこれって証拠1の問題そのものじゃないか。
最高裁の立場からすると、
「甲の供述録取書に当たり、署名押印を欠くため、証拠採用できない」
というのが正解ということになる。

最高裁が供述録取書とみた理由について、調査官解説には、以下のように書かれてある。

調査官解説

 原判決……は、本件書証は消防吏員Kの供述書であって、Aの自己矛盾供述とはいえないから、刑訴法328条の証拠として採用できない旨の判断を示している。
しかし、一般には、まず書面の記載内容のみからそれが供述録取書に当たるのか供述書に当たるのかを判別し、供述録取書に当たるのであれば刑訴法321条1項等所定の供述者の署名押印の要件を満たす必要があると考えるのが通常である。
 このようなことから、本件書証は他人の供述を聞き取って記述した書面である以上あくまでも供述録取書であり、ただ供述者の書面押印が欠けているだけであるとみるのが正当と思われる。本判決もそのような立場を採っている。

たしかに、証拠1を見る限り、甲の供述だけといえるような書面であったので、これを無理矢理Pが作成したことを理由にPの供述書とみることは不自然かもしれない。
正直言って、この部分まで判例をちゃんと押えていなかったので、甲の供述録取書ということを前提にしてラッキーだったなという感じです。
なんで甲の供述録取書と決め打ちしたかというと、証拠1をKの供述書とみると、かなり明後日な方向で議論をしなければならないような気がしたため。
原審のような立場で、328条は自己矛盾供述のみ許容としつつ、証拠1をPの供述書であり自己矛盾供述供述じゃないというのはしっくりこない。だって、甲の発言がめっちゃ書いてますもん。
しかし、原審の立場ならそうなる。ここで無理して、しかし甲の発言があるからとなると、再伝聞と同じ論理を使うことになる。
つまり、仮にPの供述書としてOKでも、そこに甲の発言部分については、さらに公判廷に代えて供述する書面となる。
とはいえ、甲の発言部分を非伝聞とすると、Pの供述書として使える場合、甲の発言部分を自己矛盾供述で使えるという可能性はありそうだ(原審はそう考えなかったが)。
こんな感じに色々無理をしたとしても、結局、Pの供述書として伝聞証拠に当たる以上、321条1項3号の要件を満たす必要があるため、結局伝聞例外に当たらないとなる。
ちなみに、Pの供述書とみた場合、これがPの伝聞証拠になる点には争いない*1
なお、大コンメンタール刑事訴訟法第7巻569、585頁には、次のように書かれている。

 「供述書」とは、供述者自らその供述内容を記載した書面である。
 書面については、原供述者(供述書の場合は書面作成者、供述録取書の場合は供述者と録取書面作成者の双方)に対する反対尋問を欠くものであるから、もともと書面自体が伝聞証拠といわざるを得ないものである。

判例が指摘した「厳格な証明」の意味

判例は、328条の許容する証拠とは、自己矛盾供述に限るという限定説に立つことを断言した。
その上で、次のように判示している。

判旨

 刑訴法328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり、別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については、刑訴法が定める厳格な証明を要する趣旨であると解するのが相当である。
 そうすると、刑訴法328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られるというべきである。
 本件書証は、前記Aの供述を録取した書面であるが、同書面には同人の署名押印がないから上記の供述を録取した書面に当たらず、これと同視し得る事情もないから、刑訴法328条が許容する証拠には当たらない……。

調査官解説では、署名押印が要求される点について、以下のように解説している。

調査官解説

 限定説に立つ場合には、次のような理由から署名押印(ないしこれに代り得るもの)は必要であるという結論が導かれると思われる。
 すなわち、供述録取書は、供述者が供述録取者に対して供述をする過程(以下「第1供述過程」という。)と供述録取者がこれを書面化して伝える書面による供述過程(以下「第2供述過程」という。)の二つの供述過程に分けて考えることができ、このいずれの供述過程についても、法廷における被告人からの反対尋問にさらされていないことから伝聞性があるとされ、供述録取書は、このような二重の伝聞性を有していると解されている。
 そして、刑訴法321条1項(柱書き)、322条1項が供述録取書に証拠能力を付与する要件として供述者の署名押印(署名若しくは押印)を求めた趣旨は、第2供述過程の伝聞性を考慮し、供述録取書の記述内容を供述者自身に認証させることによって、その真実性・正確性を確保し、この点についての被告人からの反対尋問を不要なものとし、その伝聞性を問題のないものにする趣旨と解されている。
 ところで、限定説は、自己矛盾供述に限って伝聞法則による制限を外す考えであるから、供述録取書の場合、刑訴法328条によって伝聞法則の制限が外れるのはあくまでも第1供述過程についてのみということになるはずであり、第2供述過程の伝聞性の問題は残ることになる。そうすると、第2供述過程との関係から、供述者の署名押印(ないしこれに代り得るもの)が備わっていない限り、結局供述録取書全体について伝聞法則による制限が外れず、刑訴法328条によっても証拠として許容されないと解するのが論理的な帰結となろう。
 この第2供述過程は、いわば自己矛盾供述の存在を証明する部分ともいえるため、上記のような考えは、言い換えると、自己矛盾供述の存在については刑訴法が定める厳格な証明を要すると解する立場ということができると思われる。

以上からわかるように、署名押印の要求される理由から逆算して考えても、証拠1を供述書と考えた場合、かなり恐怖な感じになりそう……(汗)

供述録取書は
① 供述者→供述録取者への供述(第1供述過程)
② 供述録取者→書面化(第2供述過程)
この二重の伝聞性を有している。
しかし、供述者が署名押印することによって供述録取書の記載内容の真実性・正確性を担保できるので、実質的にみて「供述者→書面化」といえ、②の伝聞性を解消できる。このようなことが問題とならない点で、供述者自身が作成する供述書と異なる。
②の伝聞性は328条で解消できる問題ではないので、この点について判例は「刑訴法の定める厳格な照明を要する」というのが判旨の趣旨ということになる。

したがって、答案戦略としては、328条の問題であり判例の理解が問われているということがなんとなく問題文から把握できるので、証拠1を供述録取書とみて、厳格な証明の意味も書いて、328条では解消できない伝聞性があるということで、署名押印の趣旨から、これを欠くとだめだと、判例の立場を敷衍して作成するというのがいい感じ。
もちろん、結論ありきのにーやんはそんなことまったく考えていない。お恥ずかしい限りです。
しかし、供述書として書きそうになったにーやんとしては、その場合かなりヤバい答案を書いてたと思う。
だって、その場合でも、328条の判例の厳格な証明で署名押印ないからこれだ!とピーンときてて、これを書くと決め打ちしていたから。
しかし、供述書で署名押印の要求は困難を極める。

それでは、証拠1を供述書とみた場合どうなるか?
これは、結構大変。特に、供述書と考えた上で、署名押印が必要とか書く答案は、上記の解説との整合性をどう考えるのか明らかにしなければ、厳格な証明や署名押印の意味を理解していないと思われる危険がある。
つまり、供述録取書に署名押印が要求される趣旨が、上記②の伝聞性の解消にあるとすると、これは供述者→供述録取者への供述過程が問題となる供述録取書特有の問題である。条文が、供述書に署名押印を要求せずに、供述録取書にのみ「供述者の」署名押印を要求しているのもこのような理由による。
にもかかわらず、証拠1を供述書とみながら、署名押印を必要とするとすれば、このような供述録取書における理由は妥当しないことになる。供述者による録取内容の真実性・正確性の担保という署名押印は、供述者本人の作成する書面には妥当しないためである。

今思うと、証拠1は、普通に問題文を見た感じではPの供述書と考える余地もありそうなんだと思った。供述録取書に逃げて良かったけど、結果論。まぁ司法試験ってそういう運の要素って結構大きい気がする(汗)

ほんま司法試験は恐ろしいな。供述書か供述録取書かで、全然理屈が通じなかったりする。こんな些細なことで……とか思っちゃうけど、きっと些細なことではなくて、そういう部分が基本かつ重要な部分なんだろう。判例学習はしっかりしておかないとダメですな。

しかし、こう振り返ると、やっぱり重要判例については、調査官解説が有効だなーと再認識しました。
重要判例って言っても、実験見分調書の要証事実についてのあれとか、訴因変更の要否のあれとか、まぁ限られるので、今のうちにしっかり分析しておこうかなと。
それと、判例学習では事案もしっかり押えることも重要だというのが、当たり前ながら今回の問題で再確認できたなと。そういう部分は意識してたつもりだったけれども、やっぱり不十分だなと反省。

反省文。以上!!!!

*1:ここでPの供述書なのに非伝聞なんて勘違いすると、伝聞法則が骨抜きになる。聞込みをしたり、供述を録取したPが作成した書面の内容の真実性を前提に供述書は証拠になるのであり、まさに供述証拠(供述証拠は供述内容の真実性を証明することを前提とする)として使うのであるから、物証(この場合、記載内容の発言の存在すら無関係)として使うような場合でない限り、供述書は伝聞証拠になる。供述証拠や供述書、要証事実の意味なんかを理解していれば当然のことだけれど、「非伝聞」というマジックワードでなんでも証拠にできると勘違いする罠が本問にはある(そんな罠知りませんかもしれないけど)。