にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した物語である

賄賂罪から始まる刑法の基本書に対する不満とその解消のための大塚裕史先生の刑法の思考方法。の巻

苦手克服のため、賄賂罪について少し勉強してました。

「わいろ」ってたまにニュースとかでも話題になるけれど、一般人もなんとなく悪いことをする政治家がその見返りとして金銭を受けているのがわいろなんだろうとか思っていそう。

刑法の教科書では、この賄賂罪の説明がすげーわかりにくい。
  ↓
そもそも、条文がわかりにくい。
  ↓
だから、苦手なまま放置。
  ↓
結果、苦手なままになる←今ココ!

そういう負のスパイラルを体験してます(進行形)。

にーやん的には、刑法の教科書が諸悪の根源やと思うねん。
だって、有名どころの教科書は、大抵いきなり保護法益の説明が意味不明やから。

 
公務の信頼が保護法益で、それは適法行為でもそれに対して金銭の授受があれば収賄罪成立するからとかいう話から始る。

しかし、初学者はまずその賄賂罪の構成要件すら理解してないわけで、しかもその構成要件は非常に多岐にわたるのでややこしさ倍増なのは、194条~194条の4を見ればすぐわかるだろう。

要するに、賄賂罪の基本的な犯罪類型、対向犯という特殊性なんかをまず理解しないと、保護法益の議論なんてわかるはずがない。
これでは、賄賂罪の冒頭から、いきなり「ふーん」って感じに読み流してしまうことになる。

これって、文書偽造のところも似てる。
いきなり有形偽造とか無形偽造とか、そういう話になる。
有形偽造がどういうものかをきちんと理解すんのって、それがどの犯罪のどういう構成要件として議論されるものかを正確に認識しなければ、意味がない。

 

しかし、基本類型の犯罪の構成要件だけでも理解すれば、きちんとつながる議論なので、問題はない。
要は単純な話で、賄賂罪ならば194条1項前段の単純収賄罪と198条の贈賄罪の構成要件だけでも押さえて、文書偽造ならば159条1項の有印私文書偽造罪と161条の偽造私文書等行使罪の構成要件を押さえる。

これだけで、保護法益の議論や賄賂の意味、有形偽造の意味なんかが、実際の犯罪でどう位置付けられるのかがきちんとつながって理解できる。

こういう愚痴がでるのは、(個人的には大好きな)前田先生とか山口先生の教科書が、順番に読んでても論点主義的で点と点がつながるような感じになってないから。
とはいえ、ちょっとした工夫で、その内容もつながるので、悪書というわけではない。

けれども、初学者に対する配慮は皆無!!!!

なので、刑法各論の勉強の際は、まず基本となる犯罪の構成要件くらいは押さえてから、教科書を読もうってのが、ずっと思ってたこと。

財産犯も似たような感じ。いきなり占有説とか本権説とか、不法領得の意思とか言われても……
ただ、財産犯はまだ理解しやすい。窃盗罪の構成要件はなんとなくわかってるから。
でも、支払督促を悪用した詐欺罪の有名判例でも出てくるように、不法領得の意思なんかは基本的に領得罪一般に妥当する話。
そういう関係ってよく考えればわかるけれど、問題として問われたら看過してしまうこともある。

「体系的理解」っていうのは、そういうことなんだろう。

しかし、体系的理解を実践するのは難しい。体系的理解という観点から考えると、上記のような刑法の教科書が冒頭で保護法益の話をするのは当然。とはいえ、上述のような弊害もある。
やっぱり、1回目は読み方を工夫しないとなかなか理解できないわけで、そういう意味では先生の講義なんかが重要で、独学はきついってのがよくわかる。
1回目につまずくと、修正するのが難しい。困った困った。

この点、名著と名高い西田先生の刑法各論は窃盗罪の構成要件から始って、保護法益の議論はその後になされている。もちろん、問題の所在も的確で、その射程が242条が準用されている罪すべてに当てはまることだという点ももちろん指摘してフォローされている。

ただ、やっぱり賄賂罪はどれも似たような感じで、保護法益から始り、次は賄賂や職務の意義とか……

賄賂罪はどれもわかりにくい。

この点、大塚裕史「刑法各論の思考方法」は素晴らしい!!!!

刑法総論の思考方法

刑法総論の思考方法

 

これまでの愚痴をすべて解消する絶品。

冒頭のページでは賄賂罪の基本型が単純収賄罪の197条1項前段だということをきちんと指摘した上、

① 公務員において金品の授受があっても、それが職務行為と関連性がないと賄賂罪は成立しないこと
② 依頼された職務行為(公務)が不正なものでなくとも賄賂罪が成立し得ること

を指摘。
そして、単純収賄罪には、賄賂の受け取り等が、

ⅰ 職務行為の後になされるもの
ⅱ 職務行為の前になされるもの

の2類型あるということも具体例とともに説明されている。

しかも、ここまででたった2ページ!!
いきなり保護法益で数ページ使う体系書とは違うぞ!!!!

最近、ローの予習には、専ら刑法の思考方法と調査官解説を使用している。
もちろん、思考方法が万能というわけではなく、体系書ではないので刑法を全般フォローできるわけではないという弱点もある。
しかし、その弱点をものともしないほど、威力がでかい。

もちろん、大塚裕史「刑法総論の思考方法」も同じく素晴らしい出来

刑法総論の思考方法

刑法総論の思考方法

 

それを痛感したのが、以前ブログでも書いたクロロホルムの判例
調査官解説を読んだ後に「刑法総論の思考方法」の該当ページを読めばわかるけれど、用語法などほとんど調査官解説に準拠していて、要約版のようになっている。
しかし、それで終わらないのが学者の意地というか、きちんと判例に対する批判的な視点も踏まえているというところ。
重要判例について、きちんと事案を分析して理論的にも精査されているというのがよくわかる。
ロースクール生がこれを使わず、何を使う?ってくらい重要な点をわかりやすく解説してくれている。

あと、余裕があったら裁判例コンメンタールもフォローできれば、授業の予習はばっちし。

裁判例コンメンタール刑法 第1巻

裁判例コンメンタール刑法 第1巻

 
裁判例コンメンタール刑法 第2巻

裁判例コンメンタール刑法 第2巻

 
裁判例コンメンタール刑法 第3巻

裁判例コンメンタール刑法 第3巻

 

名前の通り、判例いっぱいです。
判例の位置付けなんか適切で、調査官解説でもしばしば登場する。逆に、調査官解説でこの本でまとめられていることが書かれてたりも。
逆に、違法性の錯誤に関する錯綜した学説なんかの当否についてはあまり議論しない。
この点が思考方法と異なるところだけれど、本が目指す目的が異なるので当然。
なので、重要論点については、刑法の思考方法と裁判例コンメンタールの両方をつぶせば、学説も判例もつぶせて、しかも裁判例コンメンタールでは具体的な裁判例が結構紹介されていて、当てはめでも参考になる。

ロースクールだと、どうしても基本書だけでは物足りない、というか足りない部分が出てくるから、どうせならこういうの使えばいいかなと。
こうやって考えると、基本書の立場ってほんと悩ましいなぁ。

また、アホなこといっぱい考えてたら時間をつぶしてしまった。
勉強しますorz