にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した弁護士の物語である

【DV夫】六法以外の話?【無戸籍】の巻

まいどでーす。

法律書以外の本も読まないとなぁとか思っているにーやんです。

水曜日のダウンタウンは相変わらず攻めるなぁ。
この姿勢は見習いたい。


修習を通して,六法以外の勉強も強いられてます。
色々な法的問題が世の中にはあって,それって六法だけでの話にはとどまらないなんてことはよくあること。
例えば,憲法の問題なんて,司法試験でも直接憲法の話になっているわけではなく,仮想の法律が問題になる。
個別法を通じて憲法を考える。
行政法も同じ。

例えば,司法試験受験生のみなさんはご存じだと思うけれど,無戸籍問題なんかもそう。

無戸籍の人はどうなるのか?
戸籍がないので,誰の子かわからない。
住民票もない。
もちろん,パスポートもない。

司法試験を受けるときにも必要になることがあるけれど,司法試験に受かると,法務省やらなんやらに住民票の提出することをよく要求される。
引っ越したりなんかしたときも,住民票が必要で,それがないと引越し費用なんか出ないとか。

社会生活でとても不遇を強いられるのが無戸籍。

では,なんでそんな事態になるのか?

小生はよくわからなかったけれど,例えば,捨て子なんかは親がいないからそういう事態になるのかなとか思った。
でも,捨て子は警察なんかに発見されれば,その市町村の長がその子のために戸籍を作るらしい。

じゃあ,なんで無戸籍なんて状態が発生するのか?
それは,親,少なくとも母親がちゃんといて子どもは育てられていて,ただその子どもは出生届が出されていないというケース。
こうなると,事実上,子どもは普通に生活しているものの,法律上は戸籍がないという状態になる。
では,なんで生みの母親は出生届を出さないのか?

実は,ここで六法の問題がでてくる。
どの法律が問題になるかわかるだろうか?


ヒント1

まず,どうして母親が出生届をださないのか?出したがらない理由を考えてみる。
ここでわかった人は100ポイントです。


わからない?
では,ヒント2

結婚したけど夫のDVを原因に別れ,その後に子どもが生まれた。


ここで正解すれば,70ポイント(☞´ิ∀´ิ)☞ゲッツ!!!!


ここまでくるとわかる人も結構いるかな?
わからない?
じゃあ,超サービスヒント3


子どもが生まれたのが夫と別れてから300日以内だった。


ここでピーンと来たはず!
はい。ここで正解できたら5点ゲット!



【正解】
正解は,母親は,DV夫の子どもと嫡出推定されるされるのが嫌だったから出生届をださなかったんでした。

ここまできて「はぁ?」ってなっている受験生は民法732条を要復習です。

このケースだと,例えば,出生届を出すと前夫の名前でも必要になり,戸籍の筆頭者であるDV夫の子どもとして戸籍に入ることになる。
市町村の役所でこの事実を教えられた母親は
「えっ!?やっとあの最低男と離婚したのに……」
となる。

で,どうしてもそれが嫌だっていうことになるとどうすればいいのか?
これも民法の問題。
要するに,父親は前夫ではない!ということを公的に認めてもらえればいい。
その場合,嫡出推定が及んでいるケースではどうなるのか?
答えは,嫡出否認の訴えをする。
実はそれ以外にも家事審判で別の方法もあるとか。
なるほどなと。

まぁ,そういうことで,無戸籍問題の根源は嫡出推定にあったって話。
しかし,戸籍法上では,母親の戸籍に子が入るというやり方はあるので,父親云々の問題は嫡出推定の問題であって,法律上は無戸籍自体を解消することが可能なんじゃないかな。
要するに,嫡出推定による父の記載部分は保留しつつ,ひとまず子のために戸籍を作るってことは法律上は可能ってこと。
実務では出生届において受理しないって扱いが基本で,ただ,仮のものを作ることはできるようだ。
しかし,無戸籍を解消するっていう法務省の方針からも,子の利益のためにも,そもそもこの実務でいいのかなとは思う。
裁判所の手続を経て,前夫の子ではないことが明らかにならなければ出生届を受理しないっていうのは,子どもの不利益でしかない。
これって,かつての非嫡出子と嫡出子の相続分の問題と同じで,出生した子にはなんの責任もない話。

嫡出推定っていう規定自体は合理性あるとは思うけれど,それを重視しすぎて現に存在するのに無戸籍にするような実務の取扱は問題。
この問題は母親の戸籍に編入するといった手段もあるわけだから,ひとまず誰が父は置いておいて,そうしとけばいいじゃないのかと。

しかも,実際に子がDV夫と血縁関係にあるとすれば,もはや父親が前夫であることは否定できないのであるから,ますます母親による出生届をすることのインセンティブはそがれてしまう。


とか,まぁ話を戻すと,こういった問題でも,六法自体が想定していないような法的問題が出たりする。
時事問題でも結局,六法以外の法的問題のようにみえて,結構六法のどれかの法律に関連する問題だったりすることは少なくない。

司法試験受験生は,六法中心に勉強するわけだけれど,結局,それは実務家になってからその基本となる考え方が関連する事件ばかりなので,実務家になってからその勉強は違う法律においてもすごく重要だって話。

まぁ憲法なんかはよく時事ネタが問題になるので,ニュースなんかでもそういうのを意識しておくとちょっとした受験勉強になるかも。

忙しいですが,法律だけでなく色々と勉強しよっかと思っているにーやんでした!