にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した物語である

「口頭弁論終結後の承継人」に前訴の既判力が及ぶ意味。の巻

まいどでーす。

にーやんです。

この前、民訴の既判力について質問されて、話をしていたんだけれど、なんかかみ合わない。

口頭弁論終結後の承継人に既判力が及ぶってことの意味について
例えば、こんなケース

 XがYに対して、土地甲の所有権の確認の訴え(前訴)を提起して、Xが勝訴した。この判決が確定した後、Yが死亡しZが相続人となった。Zは、Xに対して土地甲の所有権確認の訴え(後訴)をした。前訴の既判力は後訴でどう作用するか?

民訴法115条1項3号で当事者の「口頭弁論終結後の承継人」は確定判決の効力を有すると定められている。これは、既判力が当事者の「口頭弁論終結後の承継人」に拡張されることを意味するものと解されている。
上記のケースでは、Zは前訴の口頭弁論終結後にYを相続することによってYの権利義務を包括承継しており、前訴当事者であるYの「口頭弁論終結後の承継人」であることに争いはない。
したがって、前訴の既判力はYに拡張される。

ここまでが115条1項3号で定めていること。

で、拡張される既判力の具体的内容はどういうものか?
質問者はこう答える。
「Zに前訴の既判力が拡張されるので、Zが土地甲の所有権が自己にあると主張することはできない」

これはこれで正しい。

そこで、既判力の作用としては3つのうちどれに当たるのか?
って聞くと、うまく説明できない。

まぁ口頭弁論終結後の承継人の既判力の作用の在り方まできちんと書いている教科書ってないからかもしれないけれど、既判力の作用についてきちんと理解していたらわかるはず。
上記ケースについて、林家礼二先生の「新民事訴訟法概説」の461頁には次のように書かれてある。

 XがYを相手にして、ある土地の所有権確認の訴えを起こし、X勝訴の判決が確定したときには、その後にYの死亡によって相続人となったZが、右の土地の所有権を争ってXを相手に所有権確認の訴えを起こしても、前訴の口頭弁論終結時においてXが当該土地の所有権をもっていたとの裁判所の判断をZが争うことはできないことになる。

民訴法115条1項3号が定める当事者の「口頭弁論終結後の承継人」に既判力が拡張される説明として、必要十分な秀逸な説明だ。
もう少し順を追って確認してみよう。

まず、既判力の作用の復習。
上記ケースでYが死亡していない場合で、後訴でYがXに対して土地甲の所有権確認の訴えを提起した場合を考えればいい。
この場合、一物一権主義を介して後訴の訴訟物は前訴と矛盾関係になる。
基本の確認だけれど、実体法上、物権は一物一権主義が妥当し、同一内容の物権が複数人に成立することはない。基準時において土地甲の所有権がXにあるという判断と土地甲の所有権がYにあるという判断は、一物一権主義の考えからすると両立することはない。これが債権と違うところでもある(例えば、同一の貸金債権を複数人に譲渡して複数の譲受人が同一内容の債権を有することがありうる)。

民訴法115条1項3号で当事者の「口頭弁論終結後の承継人」に前訴の既判力が及ぶという場面も同じように考えればいい。

  1. まず、前訴の訴訟物に対する判断、すなわちXに甲土地の所有権があるという判断について既判力が生じる。
  2. 次に、この既判力が「口頭弁論終結後の承継人」であるZについても及ぶ。その結果、前訴の基準時におけるXに甲土地の所有権があるという判断と、これを争い前訴の基準時においてYに甲土地の所有権があり、それを相続によってZが取得したと主張することは、上述のとおり、一物一権主義を媒介に後訴の訴訟物は前訴と矛盾関係となるため、前訴の既判力に反するということになる。

したがって、Zの主張は認められず後訴は棄却されることになる。

もちろん、常にそうなるというわけではなく、既判力が後訴に及ぶというのは、基準時における土地甲のX所有にとどまるので、基準時後にX→A→Zと順次譲渡されたといったことを理由に後訴を提起する場合には、前訴の既判力に反するわけではない。これは、当事者間における既判力の作用する場面でも変らない話。

承継人に当たる基準などの論点の多い「口頭弁論終結後の承継人」だけれど、こういう基本をまず押えておかないと、ちゃんと当てはめできない。
民法なんかは総則の理解は各論の理解がなければ正確に理解できない部分もあって、各規定が有機的に関連しているというのはなんとなくわかるかもしれないけれど、民訴法も同じで、既判力が拡張されるという場合、当事者間における既判力の作用という基本事項との関連性を把握する必要がある。

まぁこう考えれば当たり前だし、難しくない話だけれど、各論点だけ暗記していて、基本が関連付けられていないとよくわからなくなって混乱することもある。特に司法試験ってそういう問題が少なくない。

基本ってやっぱり大事なんだなぁと、勉強になりました。