にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した弁護士の物語である

過去問のすゝめ

まいどでーす。

修習の書類をやっと送ったにーやんでーす。

教えてないのに,さっそく色んなところからメールが届いてくるもんなんだなと困惑。


成績がまだ届いてないのであれですが,なんか参考になることでも書こうかなと。
この長い受験生活の反省なんかを書くと,きっと反面教師的に参考になると思ってます。

今日は,受験生が陥りがちな失敗例。

過去問について。

過去問ってやっぱり本試験の闘いそのものなので,実力が付いてからやろうとする人が多いと思うのですよ。
かく言う小生もその例に漏れず,「未熟なうちはまだ過去問は早い」なんて思ったものです。

しかし,やっと合格した自分としては完全にこれは失敗だったなと痛感するところです。
できれば,未修も含めて,むしろ司法試験を目指した瞬間にまず過去問を解いてみるべきじゃないかと思うわけです。
法律をまったく勉強していない場合も含めて。
もちろん,そんな状態で問題文を読んでも,まったくわからないというレベルかもしれません。
でも,それでいいと思うわけです。

なぜかというと,出題趣旨や採点実感もあるので,まったく法律を知らない人でも,これを全部読めば,なんとなくであれどういうことが求められているのかがうっすら見えてくるはずだからです。
各科目,全年度これをやるだけで,「あれ?またこの言葉でてきたな」とか思うはずなんです。
「刑法は共犯ってのが毎回出るな」とか,「損害賠償?時効?抵当権?」とか,「強制捜査?伝聞?また出た」とか,「既判力?自白?弁論主義?またかよ!」みたいな。

要するに,過去問を通じて目に付く言葉ってのがあるので,今後の勉強でもそういった言葉に反応して,力を入れるべき範囲が見えてくるわけです。
さらに,一通り試験科目の勉強を済ませた後は,司法試験はどの程度まで勉強したら解けるかというのも見えてきます。
個人的にはこれが1番重要だと思うところで,過去問を通じて過不足なく試験対策に必要なことが何かというのが見えてくるのです。

実は,過去問を後回しにしたまま,完璧に論点を勉強しようとかやっていると,きりがありません。
特に主要論点に関する学説なんかは無数にあったりすることもあって,そういうことに振り回されて色んな基本書を読み漁っていると,必要最小限の試験対策で足りるところを,その数倍もの時間をかけて過剰に勉強しちゃったりするわけです。はい,小生がそうでした。反省してます。
しかし,そんなことやっていると,試験科目が広範な司法試験の準備は完了しません。
特に未修の方は時間との闘いです。
圧倒的に勉強時間が足りないにもかかわらず,たった1年で既修の人以上にならないといけません。
長年やれば知識は増えてきますが,未修の方はスタートからかなり厳しいということになります。

まぁ隠れ未修といった人も少なくありませんが,1年で既修以上にレベルを持って行く必要があるのは変りません。そうでなければ本試験までに間に合わない可能性が高いからです。

と,まぁとにかく司法試験は勉強すべき範囲が広く,時間もかかるということで,費用対効果を考えて効率的に試験対策をしないといけない。
にもかかわらず,倒すべき敵の実体が不明のまま修行するというのは効率が悪いわけです。
ドラクエのようなRPGゲームをしたことがある人ならわかるかもしれませんが,敵の性質や弱点を知れば敵を倒す対策を講じやすいわけです(はぁドラクエなんか10年以上やってねーな)。
司法試験も実はドラクエだったんですね。ゾーマ(古い)を倒すには過去問をやり尽くして対策。これで,倒すべき敵の弱点が見えてくるわけです。
上位答案という文字通りハイレベルの猛者の答案があるわけですから,それを見れば敵の倒し方をわかります。
そして,自分も同じように倒すための実力を付ける。
試験対策はそれだけなのです。
スライムを倒し続けてレベル100目指すのではなく,はぐれメタルとか経験値を効率よく稼げる方法があって,そしてレベルも50くらいで十分に司法試験に合格できるわけです。
前者が500時間くらいかかって,後者が70時間くらいかかるなら後者であるべきでしょ?
過去問がその手段,つまりはぐれメタルなわけです。いや,メタルキングなわけです。
そして,このメタルキングを倒してレベル50になったら,本試験でボスを倒すと。
ということで,経験値を効率よく稼いでレベルを上げましょう。

過去問を分析するっていうのは,効率よくレベルアップするための下準備というわけです。
具体的には,過去問という問題文に加えて,合格者の答案や出題趣旨,採点実感等を分析するわけです。これによって,具体的に自分に必要なものが見えてきます。
例えば,伝聞・非伝聞の区別って全然わからないとか,規範的要件ってなんぞ?とか,そういうのが見えてくると,自ずと自分に必要なものが見えてくるわけです。
実際に,過去問をみて,普段使っている教科書や百選でその論点に関する記述を読んで,どの部分まで理解しておけば問題が解けるレベルになるかというのが具体的に把握できるようになります。

このようにして,過去問を通じて,効率よく必要なものを勉強できるというわけです。

実際に,問題を通じて教科書を見返してみると,理解度もかなり深くなると思います。過去問を解いてないと経験値10しか得られなかったところが,同じ教科書でも30~50くらいの経験値になるわけです。漫然と教科書を読むよりも何倍も効率が良くなります。
自分の経験から,教科書を読んで理解した「つもり」なのが1番ヤバい。教科書読んで準備したのに,実際問題を解こうとしても解けないといった経験をした人も少なくないんじゃないかなぁ?
教科書を読んで「理解した!」と実際には理解してないのにこういう勘違いをしてしまうと,そもそも間違えるまで修正する契機がないんですよ。「わからないな」と思ってたら,わからないところを勉強することで克服できるのですが,「わかったつもり」はそもそも勉強し直す契機が自分から出てこない。
このまま本試験に吶喊してしまうと,そのまま砕けてしまったりしまい,後の祭りになったりします。はい,小生はよくそういう経験をしました。
そういう失敗をしないためにも,まぁ最悪過去問じゃなくても演習問題は常に解いて本番を意識することは絶対に必要だと思います。

ただ,早めに過去問をつぶすことによって,あぁ,あの問題はこういう理屈で解けるんだなとか,納得して本試験に直結する思考で教科書も読めるようになってくるわけです。こういう経験を積み重ねれば,ぐんぐんレベルが上がっていきます。
もちろん,これは試験対策として勉強をする際の効率のためなので,過去問だけやればいいわけじゃないのは当然です。
まぁこれは自分の経験からくる感想なので,実力付けてから過去問を解くべきと思ってちゃんとやれる人もいるので,そういう天才には向かないと思いますが。

ただ,いわゆる上位ローにも未修で留年とかしている人にはそういう効率を考えた試験対策をしていない人がいたので,もったいないなと。
自分も含めて受験生には結構頑固というか,勉強のスタイルをなかなか変えられない人がいて,それが効率の悪い努力だとほんとにもったいないのです。
そういう頑固な人に限って「予備校はだめ」という固定観念があったりして,予備校教材を使わないで論証も自前ですごく時間をかけてたりします。小生も結構そういうところがありました。話を聞いてみると間違っているところがわかってしまうので,気になるんですよね。ただ,お金がなかったから予備校を沢山利用してたと思うし,そうすべきだったかなと。
いずれにしても,実務家になったらもっと柔軟な思考を求められるので,もう少し視野を広く色々やってみてもいいのではないかと。

司法試験って,他の士業資格と違って,受験生が予備試験合格者と法科大学院の修了生で,全員が本気で数年間試験勉強している人だけなんですよ。
6000人でも,全員がそういう人。親に言われたり,会社に言われたり,なんやらで嫌々仕方なく勉強もしないまま受験する人は皆無といえる試験ということです。
そういう受験生の中で少なくとも上位25%以内に入らなければ合格にならないという競争なわけです。
4人に1人といえば簡単かと思うかもしれませんが,4人が似たような能力で必死に競争しているわけで,簡単なレースというわけではありません。

ということで,以下に3人よりも上に行く勉強をすることがいかに重要かがわかると思います。勉強してない受験生はいないんですから。

もちろん,受験生個人個人でやるべき対策が違うので,あくまで一般論ですが,
「未修1年目だから過去問はまだ」
という人よりも
「この夏休みに過去問を一通り検討した!」
という人のほうが,今後同じ授業を受けても伸びしろが違ってくるんじゃないかなというのが個人の経験です。

自分は過剰に勉強だけはしてたので,例えばある憲法の試験委員の先生がしゃべっている説明を聞きながら,「あ,これ高橋先生のあの論文のフレーズ!」とか無駄に反応していましたが,
過去問を解くことによって,「あ,この先生が言っているのは,この過去問の論点のことだ!」という反応ができて,同じ内容でも頭の入り方が変ってきます。

そして,司法試験の問題は天才たちが集まってあれやこれや言って作成するらしいので,ある意味では教科書よりも勉強になる素材でもあります。
また,過去問の解説している教材もあるので,ここから勉強してみれば,ロースクールの勉強なんて楽勝だったりします。

それに一回過去問を解いたからといって,二回目に完全正解の答案を一科目2時間で書けるようになるわけでもありません。
何回解いてもうまみがあるのが過去問かなと。

そういうことで,色々とメリットがある過去問をさっそく解いてみてはどうでしょうか?
勉強内容を度外視してなかなかストーリーがおもしろいおこわの問題とかクジラに船がぶつかった問題とか,1日に何人の犯罪者に家に侵入されてんねんとか,そういう問題があって,なかなか笑える問題も少なくありません。心の中でつっこみながら読み込めばきっと忘れることはないでしょう。
錯誤の修士論文書いた自分は,型番の例の問題も良問かなと。意思表示の一致はいつ?内心的効果意思を欠いていても契約は成立するのか?勘違いによる意思表示の契約の不一致と錯誤の違いとか重要だけど,理解している人は少ないかなぁ。

もっと早く過去問をやり尽くせばよかったぁと後悔していますあたくし。