にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格する物語(予定)である

訴訟物が異なる場合において既判力が作用する場面について

まいどでーす。

短答の通知きました。
無事通過。
よかったよかった。
(毎回結構そうだけれど)全然できた感じなくて、20分くらい時間余った憲法の点数が結構よかった。憲法は択一も運ゲーなんだなぁとか思った。

ということで、以前書くかもといっていた既判力の作用について。民訴はもうお腹いっぱい。

既判力の基本的な理解

まず、既判力の作用には、積極・消極の両面があるということは以前指摘しました。
要点は、裁判所も、当事者も、前訴の既判力ある判断に拘束されるという点です。
で、質問のなかでたまに誤解してる部分があって、それは、「既判力ある判断」が何かが正確に捉えられていないためじゃないかなと思うわけです。
条文から出発して考えると、114条1項が、「確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。」と規定していて、既判力が「主文に包含するもの」生じるということがわかります。
「主文に包含するもの」というのは、(本案判決の場合)訴訟物(訴訟上の請求)に対する判断と理解されています。
そのため、「訴訟物」という概念の正確な理解が大切ということは以前の記事で指摘したところです。
「主文に包含するものに限り」と限定しているのは、理由中の判断には既判力が生じないということを意味します。
したがって、正確に「訴訟物に対する判断」と「理由中の判断」というものを区別できるようにしなければなりません。「売買契約に基づく目的物引渡請求権」という権利関係が訴訟物の場合、その存在に既判力が生じることと、その理由中の判断である「売買契約の成立」には既判力は生じないということですね。
また、「売買契約に基づく」という部分は、訴訟物たる権利関係(目的物引渡請求権)の実体法上の法的性質を表わすものであって、理由中の判断である売買契約の成否について既判力が生じるわけではないことも、以前確認しました。したがって、前訴でXのYに対する売買契約に基づく目的物引渡請求権が認容されたからといって、YのXに対する売買契約に基づく代金支払請求権があることまで意味しないということになります。これは、両者の訴訟物が異なること、既判力が訴訟物に対する判断に生じるという原則に照らせば当然の帰結でもあります。
以上が基本。

既判力が「生じる」という意味と、生じた既判力が後訴に「及ぶ」ということの意味については、以前の記事で指摘しました。
nihyan.hateblo.jp

この記事で、既判力が作用するのは、前訴と後訴の訴訟物が、同一、矛盾、先決の関係にある場合に限られると勅使河原先生の文献で指摘されていることに触れた。

高橋宏志・重点講義民事訴訟法(上)594頁にも次のように書かれてある。

 前訴の判決は後訴にどういう形で及んでいくか、あるいは、前訴の判決が後訴で意味を持つ場合とはどのような場合かと言えば、後訴の訴訟物が前訴の訴訟物と同一である場合、後訴の訴訟物が前訴の判決と矛盾対立関係にある場合、後訴の訴訟物が前訴の判決を先決関係として定まる場合、の三類型を見出すことができる。

さらに、高橋先生は596頁の注15には次のように指摘している。

 時に、前後の訴訟物が同一の場合等に既判力が働くという説明が見られないではない。この説明でも大過ないのであるが、しかし、本来は、前訴の訴訟物(判決)に既判力が生じているから訴訟物同一、矛盾、先決の後訴に既判力が作用していくと理解すべきであり、右の説明は本末を転倒していると言うべきであろう。

この文章だけではややわかりにくいけれども、なにが「本末を転倒」か考えると次のように考えられる。
つまり、既判力が「生じる」のは、前訴の訴訟物に対する判断が確定する確定判決の時点であり、既判力が生じたといえることを前提に、後訴の訴訟物が前訴の訴訟物と同一、矛盾、先決にあるから既判力が「作用」(既判力が働く)するということになるという意味です。これは、以前の記事における勅使河原先生の指摘と同じですね。
①既判力が生じる→②後訴で作用する(前訴の既判力が後訴に及ぶ)
という論理的順序になるという意味です。
したがって、「前後の訴訟物が同一の場合等に既判力が働く」という表現は、①既判力が生じるから②後訴に既判力が作用するという論理的順序を無視する表現(「~という関係だから既判力が生じて作用する」とみえるが、既判力が生じるのは確定判決時点である)にもみえるから、それは本末転倒だ、というのが高橋先生が指摘しているところです。「この説明でも大過ない」というのは、こういう点を踏まえる限りは問題ないという意味といえるでしょう。
ということで、高橋先生もやはり、既判力が「生じる」という意味と、「既判力が後訴に作用する」「後訴に既判力が及ぶ」という意味とを分けて考えているということですね。

以上を前提に、訴訟物が異なる前訴・後訴において、具体的に既判力がどのように作用するのかという点について、考えてみる。

訴訟物が異なる場合に既判力が作用する場面

先決関係が問題となる訴訟物の関係

先決関係とは、「前訴における訴訟物(たる権利関係)が後訴における訴訟物(たる権利関係)の前提問題(先決問題)になっている場合」です(勅使川原和彦・読解 民事訴訟法141頁)。
藤田広美・講義民事訴訟346頁

 例えば,甲が乙に対し建物所有権確認の訴えを提起し勝訴判決を得て確定した後に,さらに,甲が所有権に基づき建物明渡請求の訴えを提起した場合は,前訴の訴訟物たる権利(所有権)は,後訴の訴訟物たる権利(甲の所有権に基づく建物明渡請求権)の先決関係に立ちます。この場合,前訴の訴訟物が存在するとの判断に既判力が生じていますから,これを先決問題とする訴訟物について審理する後訴裁判所を拘束します。つまり,後訴裁判所は,この先決問題についての既判力ある判断(前訴判決の基準時において甲が建物所有権を有すること)を前提としなければならず,前訴基準時後の新事由にかかる主張の有無と後訴請求に固有の事由の有無について審理をして,本案判決をすることになります。

売買契約に基づく目的物引渡請求においては、売買契約の成否は当該目的物引渡請求の先決関係といってもいいですが(売買契約関係という法律関係)、その場合、売買契約関係ということを前訴の訴訟物として、後訴請求が前訴で判断された売買契約に基づく請求である場合に、前訴の既判力が作用すると考えることができるでしょう(もっとも、売買契約関係の確認という訴えはそもそも訴えの利益を欠くとされるので、そもそもこのような既判力は問題にならないでしょう)。
テッシーはこの先決関係について、次のように注意を喚起してます(勅使川原和彦・読解 民事訴訟法141頁)。

 ここで注意が必要なのは,「後決」問題とか「後決」関係は既判力の作用する対象ではない,ということである。
 上の例で前訴と後訴の順序を逆にして考えてみてほしい。前訴が「A土地の所有権に基づく明渡請求」であった場合,既判力が生じる事項は,訴訟物たる権利関係である“A土地の所有権に基づく明渡請求権の存否”についての判断ということになる。“A土地の所有権の存否”についての判断は判決理由中の判断に過ぎず,そもそも既判力は生じない(したがってこの部分の判断は後訴に作用しようがない)。“A土地の所有権の存否”の点には,既判力が生じない以上,この点についての再審理をもともと既判力は許容していて,既判力の観点からはこの点についての後訴での主張は「蒸し返し」扱いされないのである(これは,既判力の客観的範囲を主文中の判断に限定した〔114条1項〕帰結である。ここで既判力を求める当事者のために,中間確認の訴え〔145条〕の制度が提供されている)。

司法試験の問題でいえば、売買契約に基づく目的物引渡請求が認容されても、売買契約関係の判断は理由中の判断ですので、後訴で前訴と同一当事者、同一売買契約に基づく請求がなされても、後訴の請求が前訴の目的物引渡請求権の存在を前提としたり、否定するものでない以上、既判力に反しないことになります。また、前訴の判決理由中の判断である売買契約関係自体否定することも既判力に反しないということになります。これは、所有権に基づく物権的請求認容後に、敗訴した被告による所有権確認の訴えで前訴原告に所有権がないという判断が既判力に反しないという帰結と同様です。いずれも、先決関係の権利関係を蒸し返して前訴の理由中の判断と矛盾することがありうるということを意味します。
勅使河原先生が上記で「後決」問題とか「後決」関係は既判力の作用する対象ではないというのは、以上のような帰結となります。

矛盾関係が問題となる訴訟物の関係

矛盾関係とは,「前訴における訴訟物(たる権利関係)と,後訴における訴訟物(たる権利関係)とが,実体法上論理的に正反対の関係に立っていると評価される場合」です(勅使川原和彦・読解 民事訴訟法142頁)。
藤田広美・講義民事訴訟347頁

 例えば,甲が乙に対し土地所有権確認の訴えを提起し勝訴判決を得て確定した後に,敗訴した乙が同一土地について所有権確認の訴えを提起した場合,後訴訴訟物は前訴のそれと同一ではありません(この場合,前訴訴訟物は甲の土地所有権であるのに対し,後訴訴訟物は乙の土地所有権ですから,後訴が棄却された場合,後訴判決の既判力によって確定されるのは「乙の所有権の不存在」であり,直ちに「甲の所有権の存在」を確定することにはなりません)し,先決関係にも立ちません。しかし,この場合は,実体法上の一物ー権主義を媒介として矛盾関係が成立するため,前訴判決の既判力が後訴に及ぶと解されています。つまり,前訴判決の基準時に前訴原告に所有権が帰属するとの判断と後訴原告に同一物の所有権が帰属するという主張は,それが権利の存在にかかるものである以上,前訴判決の基準時後に特段の事情変動がない限り,矛盾することになります。したがって,後訴裁判所は,前訴基準時前の事由に関する主張は前訴既判力に抵触するものとして排斥し,前訴基準時後の事由に関する新主張があるときはその当否を審理し前訴判決の判断内容を前提にした上で後訴請求につき本案判決をすることになります。債権の給付請求で敗訴して目的物を給付した被告が同一債権の不存在を理由とする不当利得返還請求訴訟を提起した場合も,訴訟物は同一ではありませんが,矛盾対立関係にあるため前訴判決の既判力が及ぶとされます。後訴裁判所は,前訴判決基準時前の債権不存在事由の主張を排斥し,基準時に債権が存在していたことを前提に審理しなければなりません。

矛盾関係のポイントは、「実体法上論理的に正反対の関係に立っている」といえるかどうかです。
なんとなく、一見すると、前訴で売買契約に基づく目的物引渡請求が認容されている以上、後訴で前訴と同じ売買契約に基づく請求が否定されるというのは「実体法上論理的に正反対の関係に立っている」と誤解するかもしれません。
しかし、ここで「実体法上論理的に正反対の関係」となるかは既判力ある訴訟物に対する判断についてです。
冒頭で確認した基本に戻って考えると、前訴で売買契約に基づく目的物引渡請求権の存在に既判力が生じたというのは、売買契約の成否という理由中の判断に既判力は生じていないということを意味します。
後訴で、前訴と同一の契約関係に基づく代金支払請求権が否定されることによって「実体法上論理的に正反対の関係」となるのは、売買契約の成否に関する判断であって、目的物引渡請求権の存在ではありません。したがって、理由中の判断である売買契約を否定して、それに基づく代金支払請求権が不存在という判断がなされても、訴訟物が異なる目的物引渡請求権の不存在を意味しません。つまり、訴訟物レベルでは、「実体法上論理的に正反対の関係に立っている」ということはできないということになります。
以上のように、訴訟物のレベルで既判力の作用を考えるということを理解していれば、ここで矛盾関係が生じる部分が判決理由中の判断に過ぎないということに気がつくはずです。訴訟物が実体法上の権利または法律関係ということを前提に、その権利関係(目的物引渡請求権)の請求原因(売買契約の締結)に当たる部分は判決理由中の判断であるということを理解しておくと、売買契約の成否やその額が前訴の既判力ある判断と後訴の訴訟物が矛盾関係にないということがわかるはずです。
以上が一般的な教科書に書かれている通説的な考えの帰結ということになります。

既判力の作用する場面とされる矛盾関係のわかりにくさ

たまに、「貸金返還請求と不当利得返還請求が訴訟物では矛盾関係になる」みたいなことが基本書で記載されることがある(高橋・重点講義(上)596頁参照)。しかし、前訴の貸金返還請求と後訴の不当利得返還請求とが矛盾関係になるということから、後訴の請求が前訴の既判力によって認められないとなるのは、上述のとおり、前訴の貸金返還請求が認容されたからです。
つまり、前訴の認容によって貸金返還請求権の存在に既判力が生じたのであるから、その弁済をした前訴被告が、前訴の貸金債務(貸金返還請求権の)不存在を理由に弁済した金銭の不当利得返還請求をすることが、前訴の既判力ある判断に反する(矛盾する)ということです。
反対に、前訴が棄却された場合を考えると、前訴の既判力は、貸金返還請求権の不存在について生じることになるので、貸金返還請求権の不存在を理由に前訴被告が前訴原告に不当利得返還請求することは既判力に反しない(矛盾しない)ということになります。むしろ、裁判所は貸金返還請求権が不存在であることを前提に後訴の判断をしなければならないことになると考えるのが、既判力の(積極的)作用の基本的な考え方と思われます。
すなわち、この場合でも、貸金返還請求権の不存在という前訴判決の判断に既判力が生じて、後訴請求が貸金債務(貸金返還請求権)の不存在を請求原因とするので、前訴の既判力に反しないよう前訴の基準時における貸金返還請求権の不存在を前提に後訴裁判所は判断しなければならず、これは、既判力が作用する場面といえそうです。
しかし、この場合、後訴請求は前訴の判断と矛盾するものではないので、矛盾関係とはいえません。つまり、この場合における矛盾関係は、前訴請求が認容された場合に限られるというのが通説です(勅使川原和彦・読解 民事訴訟法145頁、高橋・重点講義(上)597頁)。これは、「前訴判決が請求認容か請求棄却かのいずれか片面的な場合にしか矛盾関係は成立しない,ということを前提にしているため」と説明されます(勅使川原和彦・読解 民事訴訟法146頁)。

そうすると、前訴請求が棄却された場合、既判力が作用する場面のうち、どれになるのか?という難問にぶち当たることになります。
通説とは異なり、勅使河原先生は、前訴判決が請求認容か棄却かにかかわらず、前訴・後訴の訴訟物のみを比較して矛盾関係か否かを判断してよいのではないかと指摘しています(勅使川原和彦・読解 民事訴訟法147頁)。
しかし、前訴における貸金返還請求権の不存在(請求棄却)という判断と後訴の不当利得返還請求(貸金債務の不存在)は矛盾する内容ではないことは上述の通りです。

前訴・後訴の訴訟物は異なるので、残りの先決関係となるのか?
確かに、後訴の請求は不当利得返還請求は、請求原因において貸金債務の不存在を前提とするので(貸金債務がないのにその給付をしたことが、法律上の原因のない利得・損失となる)、その貸金債務の不存在は前訴における既判力ある判断なので、先決関係といえそうです。つまり、前訴で所有権が確認され、それを前提に後訴で所有権に基づく物権的請求をするのと同様に考えることはできそうです。
そうすると、前訴が貸金請求、後訴がその貸金債務の不存在を理由とする不当利得返還請求の場合、前訴請求の認容・棄却いずれにしてもやはり既判力は作用するといえそうです。この考えを前提とすると、前訴請求が棄却された場合には、後訴裁判所は、既判力の積極的作用として、貸金債務の不存在を前提に判断しなければならないということになります。
また、前後の訴訟物が同一、先決、矛盾に限らず、前訴判決と後訴の請求原因に同一関係がある場合にまで既判力が作用する場面を拡張するという考えもあり得るかもしれません。むしろ、このほうが端的に説明できそうです。

ちなみに、前訴の貸金返還請求において被告の弁済の抗弁により請求棄却となった場合、後訴で前訴の弁済の抗弁は別口債務に対するものだったと主張して前訴と同じ貸金返還請求をする場合、前後の訴訟で訴訟物が同一ゆえ既判力が作用する場面であるから、前訴の貸金返還請求権の不存在という判断について後訴裁判所は拘束されることになります。
では、後訴の請求が、同様に弁済が別口債務に対するものであるとして、それによって前訴の貸金返還請求を免れた(消極的)利益があると主張して、前訴原告が前訴被告に不当利得返還請求した場合はどうか?
この場合は、矛盾関係ゆえ、貸金返還請求権の不存在についてはやはり既判力が作用するといってよいと思います。なぜなら、後訴請求における請求原因において、別口債務に対する弁済ゆえ前訴請求の訴訟物である貸金返還請求権はなお存在するにもかかわらず法律上の原因なく利得したことを主張しており、これは前訴の貸金返還請求権の不存在という判断と矛盾する主張だからです。

以上と異なり、前訴でBがCに対して物甲の所有権確認請求が棄却され、同一物甲についてCがBに対して所有権確認請求した場合はどうか?
後訴請求に対して、Bが甲の所有権が自己に帰属することを理由にCには所有権がないと主張することは、Bに甲の所有権がないという前訴の判断とは矛盾する主張といえそうです。しかし、Cの請求は前訴と矛盾関係ではない。
Bの主張は封じるべきであるが、どういう理屈で考えるべきか?
① 考え方の一つは、既判力の作用する場面ではない、つまり前訴の既判力は及ばないとして、信義則や争点効によってBの主張は封じるという方法。
② もう一つは、既判力が作用する場面として、Bの主張を遮断するという方法。

まず、前訴の既判力は後訴に作用しないのか?
既判力は作用しないとして、訴訟追行の状況によって左右されうる信義則や争点効に頼るのは、Bに甲の所有権が内という判断に既判力が生じていることを軽視することになるといえそうです(勅使川原和彦・読解 民事訴訟法147頁)。
勅使河原先生は、前訴請求の認容・棄却に関係なく、前訴・後訴の訴訟物同士を比較して矛盾関係に当たるとします。
が、前訴では甲の所有権はBにないということが判断されており、これに既判力が生じるので、Cが甲の所有権が自己にあるという後訴請求は、前訴の既判力ある判断とは矛盾しません。にもかかわらず、前訴請求の認容・棄却に関係なく、むしろ認容を前提に矛盾関係を擬制する理屈はいまいちはっきりしません。
そのため、通説は、前訴請求の認容の場合にのみ矛盾関係となるとみます。
しかし、そもそも、既判力が、前訴の訴訟物に対する判断に後訴裁判所は拘束されるというのであるから、Bに甲の所有権がないという判断は後訴裁判所においても拘束され、Bは自己に甲の所有権があると主張することは遮断されるべきなんじゃないかなとも思います。
そうすると、既判力が作用する場面かどうかをどう説明するかが難しいです。訴訟物が異なるので、先決または矛盾関係と説明することになります。もしくは、既判力が作用する場面を同一、先決、矛盾の関係に限定する必要はないということも考えられます。
高橋先生は、次のように指摘しています(高橋・重点講義(上)597頁)。

 訴訟物の同一、矛盾、先決で考えるよりも、既判力論の基本に戻り、一度決められたことの蒸し返しは許されないという本来の形で考える方がよい。

そうすると、前訴・後訴の訴訟物の関係だけではなく、前訴判決と後訴主張の矛盾、先決まで既判力の作用する場面を拡張して考えることができそうです。
以上は、前訴の既判力と矛盾牴触する事案です。

しかし、司法試験の問題は、前訴の既判力ある判断、すなわち売買契約に基づく目的物引渡請求権の存在という判断と後訴の主張である売買契約の成否及びその額とは矛盾牴触する関係にありません。後訴の主張は前訴の後決関係にある主張であって、後訴の訴訟物は先決関係ではなく、また矛盾関係でもないからです。
ということで、どう頑張っても、後訴における売買契約の成否及びその額(これらは前訴の理由中の判断)に関する主張を既判力で遮断することはできないということになりそうです。

いずれにしても、既判力が、後訴において前訴の既判力ある判断に拘束されるという基本から、後訴請求の内容と前訴の訴訟物に対する判断をみて、後訴請求でどういう判断が必要で、それが前訴の既判力ある判断なのかを考えれば足りるんじゃないかなとも思います。


講義 民事訴訟 第3版

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解析 民事訴訟 第2版

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重点講義民事訴訟法(上) 第2版補訂版

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読解 民事訴訟法

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