にーやんのブログ

三振したにーやんが再ローを経て司法試験に合格した物語である

司法試験の答案対策における共謀共同正犯の成立要件はこれ!の巻

今日は共謀共同正犯の成立要件について

共謀共同正犯の成立要件については、これまで色々勉強してきて、勉強すればするほど
「あぁ、これはヤバいな」
という感じに、学者も実務家も錯綜しまくっている。
そこで、テーマとしては、司法試験の論文対策という観点から共謀共同正犯の成立要件をどう位置付けるべきかを考えてみた。

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従来の

① 共同正犯⊂正犯
② 正犯=実行行為者
∴ 実行行為を分担しない共同正犯は成立しない(共謀共同正犯否定説)

という形式的正犯概念から演繹するのは、生の事実が問題となる犯罪の実体に則さない。
そこで、山口『刑法総論[第2版]』323頁では、以下のように記述されている。

構成要件該当事実の惹起について重要な因果的寄与を行い、構成要件該当事実を実質的に共同惹起したと見うる場合があり、このような場合をも共同正犯の範囲内に取り込むことが、事態の実体に即した評価を可能ならしめるものだと思われる。
この意味において、実質的な共同惹起に着目する「実質的正犯概念」により、共同正犯と教唆・幇助との限界を画することが妥当だと解されるのである。
構成要件該当事実への重要な因果的寄与による、その実質的共同惹起の存在を基準とすることが妥当である。

共同正犯という概念は、共同という要件をもって正犯を拡張するものなのだから、共同実行によって法益侵害を惹起したという関係が認められれば、正犯の資格は十分認められる(もちろん正犯意思等の要件は必要)。
すなわち、共同正犯の処罰根拠が法益侵害に対して因果性を与えたことからすると、実行行為以外でもそれに匹敵する因果的寄与を行っているのであれば、共同正犯としての実質を備えうる。
そこで、実行行為の分担に代えて、「構成要件該当事実への重要な因果的寄与による、その実質的共同惹起の存在」を共同正犯の客観的構成要件(実質的な意味での共同実行性)と考える。
こういった共同正犯の実質を無視して、ただ「重要な役割」があったかどうかなんてことを何の視点もなく考えても正確な当てはめはできない。
そこでいう「重要」というのはどういった視点から、規範的意味での「重要」という法的評価になるのかを理解しておかなければ、ただなんとなく当てはめしたつもりになってる、ということになるおそれがでてくる。
「重要な役割」という要素は、犯罪を共同惹起したと法的に評価することができるかという判断に際して考慮されるものであり、それは共同正犯の客観的要件該当性の問題ということを前提に考える必要がある。
このことをやまぐっちゃんは正確に指摘している。

念のためにいえば、最終的基準は「共同惹起」、すなわち構成要件的結果を共同で惹起した共同者の一員といえるかということである。「重要な因果的寄与」はその重要な判断基準であるにすぎない。なぜなら、教唆は犯意の惹起という意味で極めて「重要な因果的寄与」であるが、だからといって共同正犯となるわけではないからである。「重要な役割」に着目する西田329頁も、共同正犯と教唆との区別には言及せず、それを共同正犯と幇助の区別基準としているにすぎない。

大枠の理解はそんな感じでいいとして、各要件の中身にも争いがあって、その理解次第で重要な事実が主要事実と間接事実かの違いが出てくる。
例えば、共謀の定義も諸説ある。

① 共謀=意思の連絡のみ
② 共謀=意思の連絡+正犯意思
③ 共謀=意思の連絡+正犯意思+重要な役割

各々、根拠はあってまだこの点について一致した見解はない。
が、じゃあ受験生はどうしたらいいのか?
どれも取り得る考えならば、答案戦略の視点から考えるべき。

にーやん的には、①「共謀=意思連絡」で当てはめすべきだと思ってて、これ以外に考えられない。
まず、共謀とは、「犯罪の共同遂行の合意」を意味するので、「自己の犯罪を実現する意思」である正犯意思とは概念的には区別される。
もちろん、規範的に「共謀」という概念に正犯意思を含んで考えることは不可能ではないけれど、概念としては意味の違うものなのだから、両者は区別した上で、各々の要件に該当する具体的事実を選択していったほうが、奇麗な法的三段論法を論じることができる。
逆に、犯罪遂行の合意と正犯意思をごっちゃにしてしまうと、どの事実がどの要件の話なのかが不明瞭になって、「正確な当てはめができてないんじゃね?」という誤解を招きかねない。わざわざそんなリスクを冒す必要はない。
しかも、正犯意思は判例・実務で重視されており、この要件は独立の要件として検討したほうが、正確な理解をアピールできるんじゃないかなとも思う。

あと、これも関連するけど、いわゆる主観説と客観説の対立。
判例実務は主観説で、西田説を初めとする客観説とは区別される。
ただ、よく指摘されるのは、正犯意思を重視する主観説では、重要な役割の有無を正犯意思を推認する重要な間接事実として考慮しているという点。
このことから、「正犯意思を必要とする判例等の理解は、重要な寄与が必要とする見解と結論において実質的に違いはないといってよい」とか言っちゃう調査官とかもいる(最判H20の判解388頁)。
確かに、「事実上」そういう認定がされるのかもしれないが、調査官解説を神説と崇めすぎると、司法試験本番ではヤバいことになるかもしれない・・・・・・

これは考えればわかることだけれど、重要な役割をしても、正犯意思がないというケースも当然あり得る。実際に、実行行為という超重要な役割をしても正犯意思を欠くことを理由に幇助とした裁判例もある(横浜地川崎支判昭和51年11月25日判時842号127頁)。
犯罪遂行に不可欠の役割をした者がいたとしても、その動機が頼まれて仕方無くやったというような消極的なケースでは、重要な役割が認められても、正犯意思がないということもあるということだ。
だから、実務家きどりでこの調査官解説みたいな感じで当てはめすると、実務素人の受験生は失敗するのが落ち。
なので、あえてそんなリスクは冒さず、正犯意思(主観的要件)と構成要件実現への重要な因果的寄与としての重要な役割を区別した上で、後者は客観的要件の当てはめ事実として検討すべき。これも、事実の評価を適切に行うため。

そろそろ、まとめたいところだけど、実行共同正犯も共同正犯なわけで、要件も整合的に考えた方がいいので、この点について整理してみる。
まず、以上の議論を前提にすると、実行共同正犯の場合

① 共謀(意思の連絡)
② 正犯意思(自己の犯罪を実現する意思)
③ 共同実行の事実(①に基づく実行行為)

が成立要件となる。
実行共同正犯においては、②の正犯意思がこれまで共同実行の意思として①に含めて考えられていたためか、あまり意識されなかったりしたけれど、①を犯罪の共同遂行の合意=意思の連絡(共同実行の意思)と位置付ければ、区別できるし、むしろ正確な当てはめからすると区別すべきだろう。
「犯罪を共同して行うことの合意」と「自己の犯罪とする意思」は異なる概念だ。
例えば、意思の連絡が犯行の一週間前になされていた場合、その時の事情は共謀の認定に加えて正犯意思を推認する間接事実も含まれ得るが、逆に犯行時における事情は正犯意思を基礎付けることがあっても、共謀の成否を分ける事情にはならない。
もちろん、結果から推認することもあるが、これは例外であって、仮にその場合でもどの要件の事情かはきちんと区別されるべき。

逆に、
「共謀=意思の連絡+正犯意思」
と考えた場合、
「a、b、cという事実から共謀成立」
と、認定すると、そのa~cの事実のどれが、意思の連絡を基礎付けるのか、それとも正犯意思を基礎付けるのかが曖昧になる。
こうしたざっくりした当てはめは司法試験的によろしくない。
そういうこともあってか、実務においても、共謀要件と他の要件は区別すべきという認識を共有するようになってきている(判タ1356号64頁以下)。

共謀共同正犯の場合、③に代えて、「構成要件該当事実への重要な因果的寄与による、その実質的共同惹起の存在」が要件となる。
さらに、実行従属性から、共謀関与者による実行行為が必要となる(共謀共同正犯における実行従属性)。共謀共同正犯の場合、教唆犯と同様で共謀共同正犯の違法性は、共謀関与者の実行行為による法益侵害の発生を介して基礎付けられることになる。
以上をまとめると共謀共同正犯の成立要件は以下のようになる。

① 共謀(意思の連絡)
② 正犯意思(自己の犯罪を実現する意思)
③ 構成要件実現への重要な因果的寄与(重要な役割)
④ ①に基づく共謀関与者による実行行為(実行従属性)

にーやん的には、これが司法試験受験界の通説になっていくものと予想。

「構成要件該当事実への重要な因果的寄与による、その実質的共同惹起の存在」というのは、山口説による説明だけれど、「共同惹起の存在」という要件は④によって基礎付けられるので、③は構成要件実現への重要な因果的寄与の有無を客観的要件として位置付けるのがいいと思う。
というのも、多くの文献が客観説においては重要な役割を独立の要件としており、これは要するに犯罪に重要な因果的寄与したことを意味するから、規範的には「構成要件実現への重要な因果的寄与」というのが正しいと思うのが理由。
ちなみに、山口説を徹底すると、「共同惹起の存在」が要件ということになるが、共謀共同正犯ではまさにそれがいえるかの判断なので、要件としては不明瞭だろう(故意は罪を犯す意思が要件というのと同じで、問題はその中身)。
共同惹起の有無を判断をするための要件として上記①~④を共謀共同正犯の成立要件と考えるほうが、現在の多数の理解と整合する。①~④の要件を満たせば、共謀共同正犯として犯罪を共同惹起したといえる。

蛇足だけれど、判タ1356号64頁は、正犯意思の不存在が抗弁に回るような指摘をしているが、そんなこと絶対に司法試験では書いてはいけない。
確かに、②以外の要件から②が通常推認されることが通常かもしれないが、犯罪の挙証責任としては①~④が必要なのだから、
「②以外の要件が充足するので正犯意思が推認できる(`・ω・´)キリッ」
なんて答案でかましたら、刑事法の基本を「わかってないな」とか思われそうなわけで、そんなリスクは冒してはいけない。

そういえば、外の科目の試験もあるので刑法の勉強をしている場合じゃなかった。
ほな、また!